樹木希林×宝島社 新聞広告がめっちゃロック

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水に流す

史上トップクラスにかっこいいサヨナラ

宝島社が読売と朝日に出した新聞広告がすごい。樹木希林さんを起用して、「死ぬときぐらい好きにさせてよ」と言ってのけた2016年から2年半、亡くなられたタイミングでコレを出してくるのは、宝島社も、樹木希林さんも、ご家族も、広告クリエイターも、ホントすごいなとしか言えない。

今出せば響くことは、まあ誰にだって分かる。でもなあ、いつ撮ったんだよ、これ。企画するほうも、受ける方もすごい。「作った人は使わない 買った人には用がない もらった人は もらったことを知らない。これなあに?」というなぞなぞを思い出した。(なぞなぞの答えはこの記事の最後に)

ビジュアルとテキスト(全文)

ビジュアルは解像度が低いので、ぜひ宝島社のHPへ。短く綴られた広告意図は、ごくシンプルながら、なんとも言えない味わい深さがある。

<読売新聞>

宝島社HPより引用

靴下でもシャツでも、最後は掃除道具として、最後まで使い切る。人間も、十分生きて自分を使い切ったと思えることが、人間冥利に尽きるんじゃないかしら。そういう意味で、がんになって死ぬのがいちばん幸せなのよ。用意ができる。片付けして、その準備ができるのは最高だと思うの。/ひょっとしたら、この人は来年はいないかもしれないと思ったら、その人との時間は大事でしょう? そうやって考えると、がんは面白いのよ。/ いまの世の中って、ひとつ問題が起きると、みんなで徹底的にやっつけるじゃない。だから怖いの。自分が当事者になることなんて、だれも考えていないんでしょうね。/日本には「水に流す」という言葉があるけど、桜の花は「水に流す」といったことを表しているなと思うの。何もなかったように散って、また春が来ると咲き誇る。桜が毎年咲き誇るうちに、「水に流す」という考えかたを、もう一度日本人は見直すべきなんじゃないかしら。/ それでは、みなさん、わたしは水に流されていなくなります。今まで、好きにさせてくれてありがとう。 樹木希林、おしまい。

サヨナラ、地球さん。

<朝日新聞>

宝島社HPより引用

絆というものを、あまり信用しないの。期待しすぎると、お互い苦しくなっちゃうから。/ だいたい他人様から良く思われても、他人様はなんにもしてくれないし(笑)。/ 迷ったら、自分にとって楽なほうに、道を変えればいいんじゃないかしら。/ 演技をやるために役者を生きているんじゃなくて、人間をやるために生きているんです。/ 代表作? ないのよ。助演どころか、チョイ役チョイ役って渡り歩く、チョイ演女優なの。/ 自分は社会でなにができるか、と適性をさぐる謙虚さが、女性を綺麗にしていくと思います。/ 楽しむのではなくて、面白がることよ。中に入って面白がるの。 面白がらなきゃやってけないもの、この世の中。/ 老人の跋扈が、いちばん世の中を悪くすると思います。/ 病を悪、健康を善とするだけなら、こんなつまらない人生はないわよ。/ 死に向けて行う作業は、おわびですね。謝るのはお金がかからないから、ケチな私にピッタリなのよ。謝っちゃったら、すっきりするしね。/“言わなくていいこと”は、ないと思う。やっぱり言ったほうがいいのよ。/ こちら希林館です。留守電とFAXだけです。なお過去の映像等の二次使用はどうぞ使ってください。出演オファーはFAXでお願いします。/ このように服を着た樹木希林は死ねばそれで終わりですが、またいろいろなきっかけや縁があれば、次は山田太郎という人間として現れるかもしれない。/ えっ、わたしの話で救われる人がいる?それは依存症というものよ。

あとは、じぶんで考えてよ。

亡くなることを広告にするという手法

この広告の何がすごいって、樹木希林さんの死に乗っかったのじゃなくて、自分の人生を使い切ろうという希林さんの意志に寄り添っているように見えること。亡くなってから死に関する発言を拾い集めたのではなくて、この広告のために言葉を残しているように感じる。

家族写真はさすがに広告のためのものじゃなく、内田也哉子さんからの提供写真のようだけど、それにしたって、この写真を選ぶのはすごい。だって、希林さんは端っこで、目線すらないんだから。これがチョイ演女優か、やられたなあという感じ。

誰が発案者で、誰が承諾する側だったのか分からないけど、「あなた(私)の死を広告にしましょう」「それいいね」ってなるの、よっぽど信頼関係ないと無理だよな。本当にすごい広告だなと感じた。

ちなみに、なぞなぞの答えは棺桶(日本だと墓石)。この広告、ある意味で樹木希林さんにとっての棺桶のようなものだけど、「作った人(広告クリエイター)にも 買った人(広告主)にも もらった人(樹木希林さん)にも もちろん墓参りする人(読者)にも みんなにとって価値がある」っていう稀有な例だなと、そんな風に感じたのでした。

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